今後の福島っこ元気村キャンプについて
今後福島っこ元気村キャンプは、これまで参加・協力してきた人々の同窓会のような形で、子どもたちとその家族、ボランティアスタッフ、関係者がつながり続けられる活動にシフトします。
以下はそこに至る経緯です。お時間が許す方はお付き合いください。
経 緯
この活動を始めた当初はキャンプ運営の知識も経験もなく、避難者の方から頼まれ、福島の子どもたちを少しでも長い時間、安全な場所で遊ばせたいというだけで走ってきました。
震災からまだ1年ぐらいの時でしたので多くの人が関心をよせてくれて、支援団体からの金銭的サポートも受けやすかったです。
ただ、人をまとめるリーダーの経験がなかったので、苦労すること、嫌なこと、学ばなければならないことがたくさんありました。それでも楽しかったといって帰って行く子どもたち、参加させて良かったという親御さん、サポートしてくださるボランティアの方々、寄付してくださるみなさん、施設やサービス・商品を提供してくださった法人・団体のみなさんなど、ニーズと支援のバランスがとれていたように思います。2012年から2019年までの8年間はいろんなことがありながらも同じような規模のキャンプを続けることができました。
転 機
「10年は続ける!」と目標を掲げてきた元気村キャンプ。「11年目からはどうしようかな?」などと考えていましたが、そんな心配の必要がなくなる出来事が起こりました。
2019年に武漢で発生した新型コロナウィルス。当初は対岸の火事の扱いでしたが、次第に身近になってゆき、2020年には人が集まるあらゆる活動が自粛に追い込まれることになりました。
となると大部屋で組んず解れつの雑魚寝でしかも大浴場。食事も一つの鍋をみんなで共有する元気村キャンプは一溜まりもないというか。実施するなどとても考えられる状況ではなくなりました。
それに私たちのキャンプは感染症に敏感に対応してきた経緯があります。コロナ禍以前、帰宅したお子さんから感染症が発生したことがありました。累は感染したお子さんとそのご家族だけでなく、宿泊施設や他の参加家庭にも及びます。施設には保健所の検査が入り、営業停止になりました。また学校給食で働かれるお母さんは、家族に指定感染症患者がでたため、出勤停止になりました。
僕らがボランティアでやっているのを支援者も、福島のみなさんも知っているので、当時苦情めいたことは言い辛かったと思います。おそらくこれ以外でも知らないところで多々ご迷惑をお掛けしていたと思います。
20年は春も夏も当然中止。21年も引き続き自粛。22年になってようやく様々な活動が自粛から再開に向かっていったように思います。
それでも素晴らしい元気村キャンプ
それでも僕らの福島っこ元気村キャンプは本当に素晴らしいです。もちろん良いことばかりではないので、キャンプで嫌な思いをした人もたくさんいたと思います。
人が集まって何かをすれば、うまくいくいかない、合う合わないがあって、100人にとって100点の活動ではないですけど、僕は1000点をつけたいほど素晴らしい時間を過ごさせてもらいました。今もこのキャンプを気にしてくださる方々は良い経験とか感想、実感をお持ちなのではないでしょうか。
素晴らしいのは「人と向き合う」ということ。それも一瞬ではなく6泊7日の生活を通して。そこから得られるものは学校や会社の人間関係で僕が得て来たものとは別のものでした。全国の数多の保養活動、特にお子さんを預かって集団生活スタイルでやられてきた方達が活動を続けられた意欲の源泉はこれだったのではないかと推測します。
人間が成長するさまをたくさん見させてもらいました。その瞬間に成長することもあれば、次に会った時には別人のようになることもあって、何度も何度もとても幸せな気持ちにさせてもらいましたし、人というものを簡単に決めつけ、型にはめて捉えることはできないことを教えられました。また、よい出来事よりもむしろ大変だったり、嫌だった体験の方にこそ貴重な成長の糧があり、それらは人と向き合い接すること、もしくは向き合わずにいたことで起きたことでした。
今の日本は、何かがよくなるようにハラスメントといった言葉を用い、コンプライアンスといった規範を設けたはずが、それらが行き過ぎて、人と人が本気で向き合う機会が減り、問題といわれる数は減ったのでしょうけれど、同時に得られるはずであったものまで無くしています。
人と向き合うことを求められるキャンプ生活はこの時代には経験しがたい貴重な時間でした。
現 状
コロナ禍の3年を経た2023年春、ミニキャンプと名付けた小規模ながらもキャンプめいたことをやってみました。再開への実験でもあったのですが、やる前から以前と同じような規模のキャンプを実施することは難しいと感じていました。
3年間止めたものを再び動かす難しさ。人の意識や社会の関心。離れて、遠ざかれば以前のよう鮮やかな感情はそこにはない。個人にも、社会にも新しい課題が次々と起き、人の気持ちはその都度そうしたものに影響され動かされてゆく。
子どもたちは子どもというにはずいぶんと大きく、もう体力と学力で彼らに叶うべくもありません。そして素晴らしいことにどうやら彼らは未来への扉を開けたり、開け始めたりしている。自らの意志と力で次のステージに進んでいる。
これは13年前、僕らがキャンプを始めた時には不安で、暗くて、曖昧模糊としていた彼らの未来がどうやら輝いている。キャンプに参加したすべての子どもたちかどうかはわからないのだけど、オジさんには眩しい若さとか、生命とかの強い光をみせつけられ、もう十二分に素晴らしいのでそのまま突き進んじゃえ!って今はそんな気分なのです。
13年前、福島の状況をよくわかってない東京の人間がお母さんたちを集め、報告会などと気軽に言ったものの、そこで現れた大きな不安、怒り、悲しみ、戸惑い、失望。
洗濯物を屋外に干す干さない、水筒で水を学校に持って行く行かない、スーパーで何を買って何は買わない。そうした些細な違い。平時だったらそんな人との違いは何にも気にならないはずなのに、あの時は本当にダメでした。本当に些細なことで人の分断が起き、不安に苛まれ、攻撃的な感情に心を奪われ。
コロナ禍を経た今なら多くの国民があの時の福島の状況を体験的に理解できるのではないでしょうか。マスク警察などと呼ばれる人々が現れた背景。死への恐怖、ウィルスへの不安が大きくなり、自分の考えや行動とは違う人への許容度がとても狭くなる。対岸の火事のうちはよいのだけど、我が事、ましてそれが自分の子どものことだったのですから、当時の彼女たちの置かれた状況を今こそ推して知ることができると思います。
本筋に戻します。
13年を経た今、我が子の未来を覆っていた闇は払われました。一体どのぐらいの割合の人がそうした状況かはわかりません。僕の耳に届く話は良いものの方が多いでしょうから。
けれども今、闇を払うためのキャンプが求められているとは感じていません。もしかしたらどこかで震災後に生まれた子どもを持つ家族がそれを求めているかもしれません。実際に僕らの仲間には以前と同じキャンプを保とうと努力している人々もいます。
また僕も、僕らスタッフも、子どもたちと同じく、以前と同じではありません。止まっていた間に環境や置かれている立場が変わっています。また同じような災害・困難が起こらない限り、私の呼びかけに応じる人の数は多くないと思います。それはこの2023年と24年のミニキャンプで感じたことです。
そのことを嘆いてはいません。むしろそれぞれの人の変化、新しいステージへのチャレンジを見守ったり、耐えて頑張っている姿を応援したい気持ちです。僕自身も50歳を超えて熱中するものがあり、新しくチャレンジしたいものも1つや2つではありません。
福島っこ元気村キャンプって
はっきりいって福島っこ元気村キャンプは簡単にできることではありません。
これだけのことを今からもう一度やれるかと問われれば、やってきた経験があるだけに疑問です。むしろあの時は何もわかっていなかったから始めることができました。それに僕一人だけが頑張ってできるものではないこともよくわかっています。仲間と、理解と、追い風と。それらがちょうどよく揃って始めてテコをつかったように大きな石を動かせる。
だからこそ福島っこ元気村キャンプは尊いし、素晴らしいんです。あんなに多くの人が他人によくしたいという気持ちである時期、ある場所に集まれば、そこは自然とよい雰囲気で満たされます。家族でも親族でもなんでもない人々の愛情に包まれるという経験、思い出、つながり。全てが買えないし、あり得ないし、有難いんです。震災支援から始まったボランティアキャンプだから生まれるものがそこにはありました。
本当に多くの人と出会いました。僕以外の人たちもたくさんの出会いがあったと思います。そしてそれは良い出会いの方がはるかに多かったと言い切ることができます。
今まで続いてきたことがその証です。つまらない、行きたくない、会いたくない、ひどい。そうした感情で満ちていたら2回と開催することは難しかったでしょう。この村で、僕の知らない出会いがたくさんあって、今もしかしたらそれは少し色褪せているかもしれないけれど、場所と時間をきちんとつくりつづければ、また色を帯び、新しい何かが生まれるかもしれない。
震災という負の出来事から始まりましたが、いつまで経っても良いことが起きる場所であったなら、この福島っこ元気村キャンプというある時期ある場所に生まれるこの村は最高の村だといって良いかな?と思います。
結構忘れちゃってる人もいるかもしれないけど、こっちは結構覚えてるんだよ。いつかまた会える日を、いつもまた会える日を。またおいで。
、、、ということでした。
福島っこ元気村キャンプ実行委員会
委員長 ぼーちゃん
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