2024年春のキャンプを終えて
活動開始から丸12年を経て、現在感じていること

昨春と同様、今年も小規模のキャンプを実施し、先日無事に終了しました。

といってもこれまでのように、1週間のキャンプ生活を経た小さな子どもたちを大型バスで福島まで送り届け、各の家族が久しぶりに顔をみせた我が子を笑顔や涙で受け入れるといったかつての様子はありません。参加者は3人。3人とも自分たちで東京までやって来て、自分たちで帰っていきました。

多くの人々、団体からご協力をいただき続けてきた当キャンプの子どもたちはお陰様で無事成長し、泣くも喚くもなく、自らの意思で集まり帰ってゆくまでになりました。昨年もそうでしたが、今年も福島っこたちが将来への希望、目標を口にする姿を目にし、とても眩しい思いでした。本当に「素晴らしい」の一言です。

元気村キャンプの変化

12年間での参加者は延べ300名以上。そのすべての子どもたちが今どうしているかはわかりませんが、今回参加した彼らのように自らの意思で、行動力で道を切り拓いているだろうことを願ってやみません。

この12年という歳月は人が変化するのに十分な長さです。幼く可愛かった子どもたちが、もう幼いとは言えない年齢になり、一緒に走って遊べば共有できた時間もそんなに単純ではなくなりました。大人になった、若しくはなりつつある彼らとのこれまでの積み重ねは、このままにすれば『おもいで』であり、アップデートすれば新しい関係性へとつながります。どちらがよいとかではないのですけれど。

毎年、総勢40〜50名ほどの人間と2週間生活をともにする機会があった頃にはこのことを意識していませんでした。しかし、子どもたちが体だけでなく心も成長した現在。ボランティアやスタッフとして関わってきてくれた人たちが人生の転機を迎えている現在。ここから先、この関係性をどのようにしてゆくのが望ましいのか考える時期だと感じています。

保養の資料室

話は少し変わりますが、最近、保養を実施してきたいくつかの団体が主体となって保養の資料室ができました。いわき市にあるこの施設は全国の各団体から当時の資料を集め、展示しています。僕たちからも何か出そうかと思ったのですが、紙媒体としてまとめたものがなく、提出を見送りました。そうした僕らのような人たちを含めれば、この場所に収められている数以上の保養がこの13年間で行われたのだと思います。そして多くの保養の現場で、子どもたちと彼らを迎え入れた人たちとの間に素晴らし時間があって、それらは奇しくも震災という災禍を起点にして生まれました。これは人間が持つ強さであり、困った時には繋がり助け合おうとする美質の存在証明だと思います。

それでいて保養はただ楽しいだけの活動ではありません。保養の現場では難しさを抱えていた子どもやスタッフもたくさんいたでしょうし、見えないところで悩み、葛藤し、さまざまな想いで子どもを参加させていた保護者がたくさんいたと思います。事実、私も多くの涙を目の当たりにしました。

彼の震災から13年経った今でも保養活動に身を投じ、当時の記録を保存しようと活動し続けてきたみなさんには同様の活動をしてきた者としてその大変さと、真摯さ、思いの強さというようなものが実感できるだけに本当に頭の下がる思いです。


子どもと原子力災害 保養資料室 ほよよん

https://hoyoushiryoshitsu-hoyoyon.jimdosite.com/

これからの望ましいあり方

このように人と活動のあり方が変化し、以前のような『活発な活動を通じて関係性が築かれる環境』はなくなりました。ではこれから私たちのキャンプと、そこで築いた関係性はどのようになってゆくのがよいのでしょうか?

はっきりしていることは、これら全てを断ち切ってしまうような状況になしたくないということです。それでは12年間続けてきた活動としてあまりにも残念であり、失敗ではないにせよ、寂しすぎるという思いがします。

今日現在、キャンプに参加した子どもたちにはまだ中学生、高校生の子どもたちがいますが、それでも私たちと子どもたちとの間にあったいろんな垣根は低くなりました。あと数年後、完全に大人になった彼らに私たちができることがあるとすれば、懐かしいという思いに応えたり、繋がりから生まれる何かが彼らの役に立つかもしれない、とかそのようなところでしょうか。

それともう一つ大切にしたいことがあります。それはこれまで一緒にキャンプを支えてきてくれたスタッフ、ボランティアのみなさんとの関係性です。ほとんどの人とはこのキャンプを通じて知り合いました。故に活動が終わってしまえば彼らと会う機会もなくなってしまいます。

このキャンプは参加者のみならず、そのご家庭の人たちや、スタッフ、応援してくださった団体・個人のみなさんで作られてきました。そうした人たちとの緩やかな繋がりを大切にできたらいいなと思っています。

もう数回、今回のようなキャンプを続けてみて、その時がいつ訪れるのか見極めたいと今は思います。ただいずれにしても遠くないうちに、大人だけの福島っこ元気村キャンプになることは間違いがありません。