2012年、緊急的にスタートした我々の被災地支援も3年目を向かえます。「最低5年は継続するぞ!」との意気込みも、世間の関心が低下し、全国の保養キャンプ団体が運営に苦労する中、やる気だけでは心もとない。

自分たちを振り返り、今と、これからどのような支援が我々にできるのか、考えてみたいと思います。

 

■2013年 実績

キャンプを年間合計14日間、相談会・報告会を3回、2つの自治体で実施しました。

① 春キャンプ相談会 2/23 ~ 2/24  福島市/郡山市

② 春キャンプ 3/28 ~ 4/3(6泊7日)  あきる野市ひだまりファームにて

・参加26名(福島市18名 郡山市8名)

・スタッフ44名(運営スタッフ10名 ボランティア34名) 延べ参加日数 166日

・収入125万円/支出115万円(前回からの繰越を加算し、次回繰越12万円)

③ 春キャンプ報告会・相談会 6/29 ~ 6/30  福島市/郡山市

④ 夏キャンプ 7/25 ~ 7/31(6泊7日)  あきる野市小宮小学校/南房総市大房にて

・参加21名(福島市20名 郡山市1名)

・収入100万円/支出108万円(前回からの繰越を加算し、次回繰越4万円)

⑤ 夏キャンプ報告会 in 福島 10/13 ~ 10/14  福島市/郡山市

 

 

■キャンプの詳細報告

②春キャンプと、④夏キャンプの詳しい報告はホームページ上に記載しました。こちらを読んで頂けると有難いです。

 2013年キャンプの詳しい報告

 

■相談会・報告会について

キャンプの実施前後に相談会、報告会と称して、福島の親御さんとコミュニケーションをとっています。これは福島の現状を知り、その上でキャンプの方向性を決めるためです。

ただ、「福島の現状を知る」と言うのは易いですが、実際は難しいです。住んでいない人間が、時々出向いていって何人かの話を聞いて「現状」といえるのか。そこに流れる雰囲気を少し感じられる程度です。

たとえば以下のようなニュースが、県内の親御さんにどの受け止められているか? こうしたことを理解するには、なるべく出向き、沢山の福島の人たちと付き合うことが大切だと思います。

 2013年11月13日朝日新聞 子の甲状腺がん、疑い含め59人 福島県は被曝影響否定

このニュースの内容を門外漢が議論しても何ほどのこともないと思います。それよりこうした報道が、そこにすむ人々にどういう影響を与えているのか考えることで、少しは心情を理解できるようになるのだと思います。

なお今年は報告会のたびに、福島のご家庭に宿泊させて頂いたり、歓迎会?(飲み会?)を開いて頂いたりしました。そうした楽しい時間の反面思うのは、以前より状況がつかみ辛く、複雑になっていると感じます。このあたりの話はこちらにまとめました。

 福島っこ元気村キャンプ 参加者の声

福島の現状から考える 「福島っこ元気村キャンプとは?」

 

■達成できたこと・改善したこと

体験と安心

原発事故によって子供たちが奪われてしまった機会を提供すること。子供たちの体を守ること。この2つが直接的なキャンプの目標です。年間14日間県外に滞在すると、およそ4%の期間、被爆量をおさえることができます。このことが与える、子供たちへの身体的な影響の軽減がどの程度なのか評価は難しいです。が、子供たち嬉しそうにしていることで得られる「保護者の心的負担の軽減」については一定の評価を与えてよいと思います。特に昨年海に出かけたことは、子どもたち、保護者の双方の反応がよかったと感じました。

 

運営能力の向上

運営内部でいえば、飛躍的に向上したのがこれです。具体的にいうと、臨機応変さ、安全管理の2点。これらは経験のある人材によってもたらされている側面が強いです。キャンプ運営の豊富な経験を持った人間が、その経験値を組織活動に落とし込むことで、雨が降ってきたからどうする?とか、事前に危険を想定して準備をするなど、各自の行動に余裕が生まれました。

たとえば雨が降った時、プログラムの変更に加え、車両の準備や、その後の食事、お風呂といった内容が変わるのですが、いちいち全員を集めて指示しなくても、動けるようになりました。こうしたことの積み重ねで一人一人にかかる心的、肉体的負担が軽減されました。

安全管理に関していえば、衛生・保険面から、プログラム面までを高いレベルで確保できるようになったことです。これも専門の知識を持った人の企画段階からの参加により、事前に参加者の健康状態を管理。対応を現場の担当リーダーに伝えることで、期間中の子供たちの体調管理を細かく行えました。

また子供たちが体験するプログラムも、経験だけにたよらず、事前に実地下見をして、野外・救急救命の対応を準備することで、より難度の高いプログラムが実施できるようになりました。夏の川遊びなんかが特にそうですね。

 

新たな人々とのつながり

これは課題でもあるのですが、私たちのキャンプは毎回宿泊場所が異なっています。好き好んでこうしているというより、単に定着できるような施設を保有していないというのがその理由です。しかし不思議なもので、その都度、私たちに手を差し伸べてくれる人々が現れます。春は生活クラブさんがあきる野市のひだまりファームを。夏は、あきる野市から小宮小学校への宿泊を提供していただきました。お陰で勝手知った地域で開催することができました。人や、機材の調達、移動がスムーズに行えるのはこのような新たなつながりのお陰でした。

 

楽しいキャンプ

そしてこのことです。子供たちは、なにもなければ、このようなキャンプに参加することもなく、外遊びを制限されることもなかったでしょう。彼らには何の責任もないことです。しかし悪影響をもっとも受けるのが子供たちであるというのが、原発事故の最悪の点です。

ですからキャンプでは、子供たちに対して「普通の野外キャンプ」として実施してきました。「普段できないことを」、「一生の思い出になる体験を」と、取り組んできました。

まあなにより僕ら自身がこのキャンプ、大好きです。たくさんの人と寝食をともにすると、なんというかこの場所にすごい人間臭さがでます(臭いじゃないですよ!)。泣いたり、笑ったり。とても他人とは思えなくなります。これはこうしたキャンプをしている人達はみな一緒だと思います。

 

■課題

これから5年間継続していく上での課題です。

継続性の確保

最低限の目標である5年間の継続ですが、簡単ではありません。特に感じるのは、スタッフの負担、資金面の安定の2点です。

人材面

一度のキャンプを実施するのに、準備におよそ3ヶ月を要します。期間中、ほぼ週1回のミーティングへの参加、各チームの準備(たとえば食事班なら食事計画作成や、子供班なら親御さんとのやり取りなど)、現地での相談会、開催前の全体ミーティングへの参加を経て、キャンプに突入します。

終わった後も、文字通りの後片付け(特に布団干し。俺らの知らないところで行ってくれた方々、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました)、精算、アンケートや、報告会の実施など、時間のかかることが多いです。楽しくやっているのですが、だからといって負担が無くなるわけではありません。社会人が殆どの中、現状以上を望めば負担が大きすぎて、運営が困難になると感じています。

 

資金面

他の団体と同じく、我々も苦労しています。本来助成金で運営されていた当キャンプですが、それらの資金は被災地の人たちが立ち上げた自立のための事業支援に向けられるようになりました。また「子ども被災者生活支援法」にも期待しましたが、方針だけは決まっても何ら実行力を持たず、現状、何の助けにもなっていません。

*余談* これまで発表された支援法の内容は、いわば「福島県の産業振興」です。行政としての福島県は、保養・避難の必要性を認めていません。そのため保養ではなく、子どもたちの「会津の文化を学ぶ機会」に置き換えられました。浜通り、仲通りの子どもたちが、会津に出かける、「お金が県内でぐるぐる回るしくみ」になっています。被災者の自立支援になっているのならまだ理解を示せるのですが。

こうした環境ですので、昨年は持ち出しをせざるを得ませんでした。しかしこれでは継続が難しくなるため、資金を確保するのに知恵と労力を惜しんでいられない! というのが現状です。

 

この先の展開を想定して、今に向かえるか

人々の関心が薄れてゆくなかで、市民にいったい何ができるのか。広島だって、水俣だって、いまだに訴訟しています。全然終わっていない。悲しいけれど、福島も同じ道を歩む覚悟が必要です。そう考えた時、我々が今やっておくべきことは何か。

考えておかないと、無関心の流れに我々のキャンプも簡単に飲み込まれてしまうという危機感があります。そうした意気込みや、気構えは大事だと思うのですが、そんな都合のよい答えはないのです。

高い関心を持ち続けること、そして落ち着いて目の前のキャンプに取り組むこと。時に迷いながらもこうした意識を保ち続けられるかどうか。

 

■これからの保養と福島っこ元気村キャンプ

未来ある保養にするために

こうした状況の中、子どもたちの機会と体をまもるために我々が取り組むべきは、「保養の常態化」だと思います。

実際に福島の人たちもあの手、この手を使って子どもをまもっています。我々のキャンプだけでなく、別のキャンプにでかけたり、短期の休みに県外にでかけたり、長期休みには親戚の家に預けたり。一部行政では、学校単位の県外への移動教室が話題にのぼっています。

こうした個人的、行政的なとりくみに、我々のような外部支援をミックスして、保養を多様化し、出かけることが当たり前の状況をつくりだすことで、「保養は当たり前!」という世の中の流れになればいい。

そうすれば保養に子どもをだす保護者が、別の保護者から批難されたり、孤立することもありません。(特に福島県外で放射線量が高い地域では、保養に子どもを出す保護者が地域から孤立する傾向が強いです。本当に切実な問題です)

そのために外部支援する我々のような団体同士がそれぞれに仲良くなって、お互いの成果を披露しあったり、手伝ったり、励ましあいながら、新たに保養に取り組む人たちを増やせないか。まずは他の保養団体とこれまでより密に連絡をとってみたいと思います。

 

元気村キャンプの取り組み

元気村キャンプとしては、具体的に以下のことに取り組んでみようと思います。

運営スタッフのの拡充

最も負担がかかる運営スタッフのやることをさらに細かくして、一人一人の負担を軽減する・・・ っていうものの、そんなにうまくいくかな?と我ながら懐疑的です。やることたくさんあります。関わってみたいという方、ぜひご一報ください。

 

スリムな保養キャンプの構築

バスサポーターの募集

そもそもお金をかけているわけではないですから、削るところなんて殆どないのです。どうしたらスリムになるのか?

およそキャンプの費用は・・・ バス移動に30万/宿泊に30万/食費含めたその他諸々に40万 です。

我々が寄付金・参加費を集める能力を50〜70万円とすると、30~40万を別途調達できるとかなり楽になる。

・・・ということで、福島っこ元気村キャンプバスサポーターを募集してみます。使途が最も明瞭なバスを切り出して、サポーターを募集しようという試みです。

みんなでちょっとずつ負担!

あとはキャンプに関わる人たちに、それぞれに少しずつ負担をお願いします。

たとえばこれまで捻出していたスタッフの入浴代。次回から各自持ちでお願いさせてください(ボランティアのみんな、ごめん!あっ、でも高校生は免除かな)。

それと中日の移動の際に子どもたちに振舞っていたお昼代、これは子どもたちのお小遣いから捻出ということで、お父さん、お母さん、よろしくお願いします!

・・・という具合に、ちょっとせこい感じもしますが、みんなが応分に負担します。結構馬鹿にならないのです。

 

作業の軽減

これまでやっていたことの簡略化を皆さんにお願いしようと思います。たとえば寄付の時の領収証発行。見ず知らずの方から振り込んでいただくことも多いのですが、御礼や、領収証を送ろうにも、連絡先がわからないことがあります。連絡不要という方もいらっしゃるのですが、それすらわからない時もあって、もらいっぱなしで、なんだかなぁと。

で・・・

① 基本、連絡&報告はネット(メールやホームページなど)で行います。

② 領収証をご希望の方は、住所を教えてください。

③ これらが不要の場合は、不要である旨、教えてください。

という具合に、こうしたやり取りを決めさせてください。我がままいいますが、どうかよろしくお願いします。

 

子どもたちとのこれから

冒頭に同じ子どもたちが参加しているとお話しました。当たり前ですが、もうそれなりの顔見知りです。出会ったときは4年生だった子達が、この4月には中学生になります。もう大人が話していること、回りでおきていること、十分に理解しています。

これまで子どもたちと事故のことや、あの日のことを話したことはありませんでした。とにかく楽しく遊んでくれたらというだけで。

僕ら丸2年やってわかったことがあります。中学生になれば子どもたちは大人と同じ扱いで、小学生のようには学校も気を使わない。休みになれば、部活のある子どもたちは他県の子たちと同じように練習があって、1週間地元を離れることは難しくなります。そうでなくても学校や、地域行事が増え、保養が常態化していない現状において、全てを放り出して保養に子どもをだすことは地域で孤立する要素を抱える。

そうした中で1年間内、4%も一緒に過ごしてきた彼らとの絆を絶やさないために何かできることがないか。これを作るのがこれからの元気村キャンプの大きな目標になります。

キャンプをして思うのは、この子達の成長を見守っていきたいな、ということ。おそらく俺が子どものときに面倒をみてくれたキャンプの人たちも同じように感じたでしょうし、俺ら以外のキャンプの人らも大体同じだと思います。

中学生や、高校生になった彼らとできることを作りたい。この春のキャンプではそのヒントを見つけようと試みます。

以上

 2014年 福島っこ元気村 村長 堀内拓馬

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