「どうにかしなければ!」という勢いだけで立ち上げた当キャンプですが、気持ちだけで継続できるものではありません。今は安定的に運営していくための支援体制を築く段階にあります。被災地への関心が失われていないという事実と、多くの人の支援があって運営できているのだという当たり前のこと。この2つを伝えることで福島に住む人々と、その外に住む人々との相互の理解が進むことを目的として、この春、どのような人の関係性の中で運営されたのか記します。

 

運営スタッフ

今回から主体的にかかわる運営スタッフと、お手伝いしてくれるボランティアスタッフとを明確に分けました。運営スタッフは10名。キャンプの計画から、実行、ふりかえり、次回に向けての報告書づくりまでを行います。事前に福島のお父さん、お母さんと打ち合わせをし、企画を立て、人と、お金集めをします。具体的には2週に1度の全体会議、チームごとの打ち合わせや、事前の施設・フィールドの下見、協力者との調整などを行います。福島へミーティングにいったり、迎えにいったりするのも運営スタッフです。キャンプ期間中も長期参加することが多く、各チームの責任者を務めます。終わった後は資料の作成や、協力者への挨拶まわりなど、計画から、こまごまとしたことまで行います。彼らがいなければキャンプを行うこと自体、考えられません。

 

ボランティアスタッフ

10名の運営スタッフだけで40名の生活の面倒をみることはできません。キャンプ中は、毎日布団上げから始まり、三食自炊して、風呂に入るのです。1週間同じスタッフで対応した方が子供たちとの信頼関係ができることもあり、各班の大人リーダーは全員が全日程参加してくれました。また子供たちはテンションが上がっているので、相手をするだけでも体力が必要です。子供たちと年齢の近い高校生スタッフのお陰で助かりました。反対に食事班は子供たちの前にでることが少ない裏方の仕事です。「作っては、片付けて」を繰り返すだけで1日が終わってしまいます。施設外でのプログラムの日は、車を出したり、プログラムの手伝いが必要になります。また専門性のあるスタッフ、特に医療知識を持った方々の参加はこのキャンプの安全性を高めてくれています。こうした運営スタッフに足りない部分を補ってくれる存在がボランティアスタッフです。

食材や物資

初回キャンプの時、福島の情報がほとんどない中、「食材はなるべく西から手に入れた方が親御さんも安心なのでは?」という想定で、西日本へ食材の提供を呼びかけました。今回もまた要望に応えて頂いています。伊賀有機農業推進協議会さんからは野菜を。紀州の観音山フルーツガーデンさんからは、おなじみのはっさくや、きよみオレンジを頂きました。また個人の方たちからも同じように支援をうけています。中にはたまたまこのキャンプのことを知り、こちらが指定する野菜や、物資を購入して送ってくださる方がいます。必要なものは大概お金で買える世の中ですが、呼びかけに応えてくれる人がいるという事実が、このキャンプに関わる者を励ましてくれます。また、様々な支援の方法をこのキャンプにつくることで、少しでも多くの人が元気村の輪に加わり、被災地へ向けて「みんなのこと、忘れてないよ!」というメッセージを発信し続けられればと思います。

チラシ

今回はじめて元気村キャンプのチラシを作成しました。今、福島で大人気の元気村キャンプ?(「福島っこ」でインターネット検索してみてください)なので、参加者を集めるのではなく、関わる人を増やす目的で製作しました。協力者が増えれば安定した運営につながるし、被災地への関心を持ち続ける人が一人でも増えればいい。このデザインもボランティアで製作してもらいました。どうです?素人っぽくないでしょ?

宿泊施設

実は宿泊場所は毎回の課題です。設備が十分でなかったり、予約や、コストなど、場所によって課題もまちまちでした。今回は生協「生活クラブ東京」さんが管理する「協同村ひだまりファーム」を利用させて頂きました。周りが子供たちがいいだけ遊べる場所であったこと。宿泊棟と、別棟があって、スタッフ専用の休憩スペースが確保できたこと。大きなお風呂があるのが特にありがたかったです。これまでは毎日日帰り温泉を利用しなければならなかったので、労力も、費用も馬鹿にならなかったのです。利用前に生活クラブの理事会に諮って頂き、利用料金を半額にして頂くという特例を受けることもできました。福島支援のキャンプだからということです。その半額分は、組合員のみなさんのカンパから賄っていただきました。

プログラム

プログラムには、運営スタッフが企画して実行まで行うものと、外部からの持ち込みや、共同で実施するものなど、いくつかスタイルがあります。大久野中学校の生徒さんたちには毎回子供たちと一緒に遊んでもらっていますし、みんなの森財団では記念植樹をした景観の森に樹木の育ち具合を見に行きました。また協同村のスタッフのみなさんからは、じゃがいもの植え付け体験をさせていただきました。これは「食事を大切にする」、「土に触れる機会を作る」というキャンプのコンセプトに沿って実施していただいたものです。その協同村を紹介してくれた、にしがわ大学のみなさんは室内でレクリエーションをしてくれました。本当はみんなで鬼ごっこをするはずだったのですが、前日からの天候が悪く、足元がぬかるんでいたため、臨機応変にプログラムを変更した結果です。持ち込み企画は、運営スタッフの体力負担を減らし、無理なく子供たちにプログラムを提供できることと、地域の人たちがキャンプに参加できることもあって、継続性を高める上でとても大切です。そういった点でこれからもこの繋がりを大切にしていきたいと考えています。

メディア

地域の理解、協力を得たいということと、福島にて現在おきていることに関心が失われないようにとお伝えしたところ、西多摩新聞さんに取材をしていただきました。繰り返しになりますが、継続していくにはそこにいる人々の理解と、協力がとても大切なのです。こういった取り組みの成果はこれからのキャンプに現れることでしょう。

 

寄付

およそ50名の方から、75万円程の寄付をいただきました。寄付をしてくださる方の多くは、初回からずっと寄付してくださっている方であったり、友達や、花咲き村、みんなの森の活動でつながっている人々であったりします。また今回は大家さんの寄付がとても増えました。「なぜ大家さん?」と思うかもしれませんね。実は友人の大家さんを通じて、全国の大家さんに寄付の呼びかけを行う機会をもらいました。不動産投資の情報を扱うホームページでしたので、正直なところ、お金にならない呼びかけに応じる方がいるのか疑問でした。ところがこちらのホームページを見てという大家さんからたくさん支援をいただきました。中にはキャンプを見学にいらっしゃった方もいます。一人から100万円もらうより、100人から1万円の方が、人の繋がりの多様さ、継続性といった点ではるかに価値があります。なお、前出の友人が代表を務める「行動する大家さんの会」は、こちらの呼びかけではなく、自主的に募金を集め、当キャンプへ寄付してくれました。当キャンプに当事者意識をもってくれる人たちが増えていると感じさせてくれる好例です。

参加者

支援内容を紹介するのに、参加者のみなさんを含めるのを不思議に感じられるかもしれませんが、実はそうではないのです。「元気村キャンプをやる!」といっているのは我々であり、参加者の皆さんからお願いされて始めたわけではないのです。物事なにをするにしても、そこに喜びや、楽しみを見出す人がいなければ成立しないですよね。それは寄付や、ボランティアといった社会貢献であっても同じです。元気村を求め、喜んだり、楽しんだりする人たちがいるから、継続できるのです。ただし「喜ばれている」という事実に酔いしれて、自分を見失ってはいけない。喜んでくれる人がいれば、何をしてもいいし、自分たちは正しいというわけではないのです。だから参加する子供たち、お父さん、お母さんたちの声や、声なき声に耳を傾ける努力をし、元気村を作っていくことが継続する上で最も基本的なことになります。回数を重ねていくなかで、お互いを理解し、関係をよりオープンなものにしていくことで、支援するものと、支援されるものという関係を破壊し、このキャンプを続けていくために、同じ高さから、同じ方向を向いた関係を築くことに取り組みたいと思います。

 

以上、内側からみた元気村キャンプの関係性を紹介しました。この関係性を理解することで、そこに住む人と、外に住む人の相互の理解を深め、このキャンプが必要とされている福島の現状とはどのようなものか?義務や、報酬ではなく、なぜキャンプが成立っているのか?互いに思い至る一助になれば嬉しく思います。